【トヨのお散歩道】星が輝くとき
トヨは時々散歩の途中、海岸から夜空を眺めている。
遮るものがない場所から見る星は、最高だった。
宇宙船や流れ星にも、度々遭遇した。
宙には、未知の世界が浮かんでいる。
ある日、誰かがトヨにが話しかけてきた。
「ねぇねぇ…」
一瞬宇宙人かな?と思ったが
周りを見ても、誰もいなかった。
話しかけてきたのは、夜空に輝くひとつの星だった。
星が、トヨに質問をしてきたのだ。
「私は、どんなふうに見えていますか?」
いつも夜空を見上げているトヨに、星が問いかけた。
不意を突かれた質問に、戸惑いながらも
トヨが答えを探していたその時
強い風が吹いてきて、風の音がこういった。
「星よ、お前は自分のことが分かってないなぁ?
お前より俺の方が何百倍もすごいんだぞ。
見て見ろよ、俺はこんなに
強い風を吹き荒らすことができて
雲を運ぶことだって出来る。
お前にそれが出来るかい?
雨雲を運んでくれば
雨だってふらすことが出来るんだぞ。
夜空の上でただ、キラキラと輝くお前みたいに
何にも出来ないやつと俺は違うんだ。
雨すら降らすことが出来ず
ただキラキラと光っているだけ。
それがお前の姿なのさ。」
風は常に動いていて
そこに留まることが出来ないので
言いたいことを言ったら
すぐにその場を去っていきました。
だけど星は、風の音を聞き流すことが出来ず
黙ってしまい、キラキラと光るその輝きを
どんどん小さくしていってしまったのです。
そんな星の姿を見て、トヨは星にたずねました。
「君は、あの風のようになりたいのかい?
それとも、昼間活躍している
太陽のようになりたいのかい?
それとも、夜の空に浮かぶ
満月みたいになりたいのかい?
それとも、空を轟かす雷のようになりたいのかい?」
星は、しばらく考え込んでから、こう答えた。
「私は、ただ夜空で輝く星でいたいんです。」
「そうか。ただ、夜空で輝く星でいたいんだね?」
トヨがその言葉を繰り返して言った。
「なぜ夜空で輝く星でいたいんだい?」
すると星は、またしばらく考え込んでから
「輝いていると、なんだか心が楽しくなるんです」
そう言った。
「最初の質問の答えは、もう君が持っているんだね。
君が僕からどんなふうに見えているのかは
氣にしなくていいってことさ。」
「君が僕と会話をしたように
自分の心と会話をしてあげて
君の心が軽くなる答えを、出せばいいんだよ。」
「隣に、似たような星は沢山あるけれど
君の輝きは、そのどの星とも違うよ。」
「君が、どう輝くのかは全部、君次第なんだ。」
「君が心から輝きたい、なりたい星に
なればいいんじゃないのかな。」
トヨがそう答えると、星はまた
自分がいるその場所で
キラキラとした光をとり戻していった。
「自分の心の声をちゃんと聞いてあげた時
自分の心の声を大事にしてあげた時
光はますます、輝き始めるんだよね。」
そう呟きながら、トヨはまた
夜の散歩に戻っていった。
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